歌麿《寛政三美人》をどう見る?似た顔を分ける線と装い

《寛政三美人》の全図 日本美術

三人を一度に見ると、顔立ちが似ていて誰が誰か迷うかもしれません。名前を当てる必要はありません。顔の向き、髪の生え際、衣装と扇の違いを順に比べると、似た形のくり返しの中に配置の工夫が見えてきます。

作品情報と、三つの顔の配置

《寛政三美人》の全図

喜多川歌麿の《Three Beauties of the Kwansei Period》は、メトロポリタン美術館がca. 1791年とする木版画です。紙に墨と色を用い、寸法は高さ38.7センチ、幅25.7センチ。作品番号はJP1528です。

まず三つの顔の位置を見ます。中央の頭部は左右より高い位置にあり、左右の顔は内側へ向くように配置されています。三人の頭を結ぶと、ゆるやかな三角形が現れます。顔の違いを探す前に、このまとまりを押さえると個々の細部が全体の中でどんな役目を持つかを追いやすくなります。

顔の向きと視線を比べる

三角形に並ぶ顔

左、中央、右と順に顔の向きを比べてみましょう。正面に近いか、横を向くか、視線がどちらへ流れるかを見ます。輪郭の似かたに目が止まったら、眉と口の傾きにも注目してください。わずかな角度の差が、三人を同じ顔の反復ではなく、画面内で向き合う別々の形として見せます。

この違いは表情から性格を決めるためではありません。Metの公開作品ページは三人の名前や身分を示していないため、本稿でも個人の同定や関係を推測しません。

髪際と髪飾りの線を見る

髪際と髪飾り

黒い髪は大きな面に見えますが、額に沿う髪際や櫛・髪飾りには細い輪郭が集まっています。三人それぞれの生え際の形、飾りが置かれる高さ、髪の外側へ伸びる線を比べると、黒い面の中にも異なるリズムがあると分かります。

拡大図で細線を確認したら、全図へ戻して位置を確かめます。切り抜きだけでは飾りの配置や頭部の向きを読み違えることがあるからです。

襟・模様・扇で、顔以外の差を探す

襟と着物の模様

襟の重なりと着物の柄は、顔の形とは別の比較材料になります。線が細かく集まる場所、面が広く見える場所、模様の向きが変わる場所を見比べましょう。色や柄を人物の身分の証拠として扱うのではなく、画面上で見える違いにとどめます。

扇を持つ手

扇は三人の顔から少し離れた位置にあり、直線的な縁と、それを支える指が見えます。誰が持つかを確認したうえで、扇の向き、指の重なり、袖口との距離を比べます。顔・髪・衣装・持ち物の複数の手がかりを組み合わせることで、人物を名前で分類するのとは別の読み方ができます。

比べた差を、もう一度全図へ戻す

三角形をつくる頭部、左右から内へ向く顔、髪の細線、衣装の模様、扇の角度。これらを全図で一度に見直すと、同じような顔立ちの反復と、それぞれの配置の差が一枚の構成にまとまります。

本稿が示したのは画面の比較方法です。三人の実名、職業、社会的関係や作者の意図は、参照したMet作品ページから確認できないため断定しません。線の動きの違いを別の日本美術作品で見るなら、光琳《波濤図屏風》へ。視線の見方は肖像画の視線を読む、鑑賞の基本は一枚の絵を見るガイドも参考になります。

出典・画像クレジット

日本美術

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