
梅の木が何本も並ぶ庭ですが、最初に目へ入るのは花よりも太い幹です。幹は画面の手前に大きく置かれ、その向こうに小さな人々と建物が見えます。
この記事では、幹、枝と花、人影、右手前の駕籠を順にたどります。物語を想像する前に、近くのものと遠くのものの大きさを比べると、画面の奥行きがつかみやすくなります。一枚の絵を見る基本の順番も補助に使えます。
まず作品プロフィールを30秒で
- 作者: 歌川広重(Utagawa Hiroshige)
- 作品名: 《名所江戸百景 蒲田の梅園》
- 英題: Plum Garden at Kamata (Kamata no umezono)
- 制作年: 1857年(安政4年)
- 技法・素材: 木版多色刷り、紙
- 寸法: 縦大判、33.7 × 21.9 cm
- 所蔵: The Metropolitan Museum of Art
The Metの公式作品ページとOpen Access APIは、この作品とデジタル画像をPublic Domainとして表示しています。本作は「名所江戸百景」の一図です。
最初に、左の太い幹を見る

左の幹は画面の下から立ち上がり、上部で太い枝を横へ伸ばします。枝は空を一枚の広い色面として見せず、いくつもの小さな区画に分けています。
木の全体を数える必要はありません。まず最も太い幹を一本だけ選び、下から上へ目でたどります。枝分かれの位置が分かると、細い枝が多くても迷いにくくなります。
枝と白い花の反復を追う

太い幹の周囲では、細い枝が斜めや横へ伸び、白い花が短い間隔で繰り返されます。幹の暗さと花の明るさを交互に見ると、枝の向きがつかめます。
花を一輪ずつ数えるより、「暗い線の途中に明るい点が続く」とまとめて見るのが近道です。広重《大はしあたけの夕立》の斜めの雨と比べると、細い線の反復が画面を動かす方法の違いも見えてきます。
小さな人影と建物で距離を測る

画面の下半分には、梅の木の間を歩く人々と低い建物が描かれています。手前の幹に比べて人物は小さく、幹の向こう側に隠れる部分もあります。
遠近法の一点を探さなくても、大きさと重なりで距離は読めます。大きな幹、小さな人物、さらに細かな木立の順に見ると、庭が奥へ続くことが分かります。
右手前の駕籠を、画面へ戻る目印にする

右手前には、青い部分を伴う駕籠(かご)が大きく描かれています。駕籠は人を乗せて運ぶ乗り物です。同じ図柄の別の摺りを所蔵するアレン記念美術館は、手前に一部が見えるものを山駕籠と説明しています。人物よりずっと大きく描かれた駕籠と斜めの棒は、縦に伸びる梅の幹とは別の形です。
細部を見た後は全図へ戻り、左の幹と右の駕籠が画面の両側を支えているか確かめます。二つの大きな近景の間に庭が開くため、私たちは木陰から奥をのぞくように画面へ入れます。
全図へ戻り、近景と遠景を三段階で見る
最後に、次の順番で全景を見直します。
- 左の太い幹と右の駕籠という、手前の大きな形。
- 中ほどの梅の枝、花、建物。
- 奥の小さな人影と細かな木立。
この三段階を分けると、花の多い画面でも視線の置き場所が決まります。波、舟、富士を大きさと重なりで読む北斎《神奈川沖浪裏》と見比べるのもよいでしょう。
《蒲田の梅園》は、花だけを切り取った図ではありません。幹と駕籠を大きく置き、その間に人々のいる庭を見せることで、近くから遠くへ視線が移る構図になっています。
出典と画像クレジット
- The Metropolitan Museum of Art, Plum Garden at Kamata
- Allen Memorial Art Museum: 同じ図柄の別の摺りと山駕籠の解説
- The Met Open Access API, object 53681
- The Met, Image and Data Resources
画像: Utagawa Hiroshige / The Metropolitan Museum of Art, Public Domain / Open Access。部分画像は同じ公式原画像の切り抜きです。


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