馬の首、脚、手綱がつくる流れ――ローザ・ボヌール《馬市》を読む

ローザ・ボヌール《馬市》の全景 近代美術

ローザ・ボヌール《馬市》の全景

《馬市》の馬たちは、同じ方向へ整列していません。首は前へ突き出し、脚は地面を踏み、手綱は斜めに引かれます。形がばらばらに見えるからこそ、横長の画面には大きな流れが生まれます。

ここでは、メトロポリタン美術館(Met)の作品情報を手がかりに、馬の身体の向きや重なりを画面から読み解きます。

約5メートルの横幅が、群れを走らせる

  • 作者: Rosa Bonheur
  • 作品名: The Horse Fair
  • 制作年: 1852–55
  • 技法・素材: Oil on canvas
  • 寸法: 96 1/4 x 199 1/2 in. (244.5 x 506.7 cm)
  • 所蔵: The Metropolitan Museum of Art

Met公式作品ページとOpen Access APIは、この作品とデジタル画像をPublic Domainとして表示しています。

横幅は約507cm。全景では一頭ずつを追わず、左の馬の首から中央の白馬、右奥の小さな人影までを一本の経路として見ます。美術館で絵をどう見ればいい?のように、全体から細部へ進むと、この大きさを画面上でもつかめます。

首と脚は、馬の重さを別の方向へ運ぶ

左側から続く馬の群れ

中央の白馬では、首が前へ伸び、胴は長く横へ続き、脚は下へ沈みます。身体を単なる輪郭でなく、首・胸・腹・脚という重さの移り方として追うと、走る馬を「速そう」と言う前に、どこが押し出され、どこが地面を受けているかを観察できます。これは解剖学的な名称の暗記ではなく、身体の部分が担う形の役割を見る方法です。

手綱の細い線が、人と馬を結び直す

中央の白馬と騎手

馬の胴体は太い曲線ですが、手綱は細い斜線です。騎手の腕、馬の脚、手綱を順にたどると、人物と動物が離れた塊ではなく、線で結ばれた一つの運動として見えてきます。絵の消失点はどう探す?を使うなら、線が遠くへ消えるかではなく、手前の太い身体と奥の小さな人影の差にも注目してください。

空の明るさは、脚の密集を読ませる

走る脚の重なり

画面下では脚、蹄、影、地面の暗い形が重なります。上へ行くほど空が広く明るくなり、馬の背や首の輪郭が抜けます。この明暗差のおかげで、脚が密集していても群れが一枚の暗い塊になりません。白馬だけを見るのでなく、その周囲の暗い脚と空の余白を交互に見るのが近道です。

右端へ向かう群れが、画面を閉じない

右側の群れと観衆

右端の黒い馬は外へ進みそうに見えますが、その奥には灰色の馬や人影が続きます。手前の大きな身体から奥の小さな形へ移ると、画面は右端で切れず、遠くまで伸びて感じられます。細部を見たら必ず全図へ戻り、首・脚・手綱の流れが横幅全体でどう続くかを確かめてください。

馬市で重ねた観察

Metによると、この絵の舞台はパリのロピタル大通りで開かれた馬市です。ボヌールは約1年半、週に2回現地でスケッチを重ねました。画面の馬の首や脚の向きに目を戻すと、こうした観察が大きな群れの表現にどう結びついているかを考えられます。

別の近代絵画と比べるなら、近代絵画の入口へ進めます。次に画像を見るときは、①中央の首、②脚の重なり、③手綱、④空の余白、の順にたどってください。群れの動きが、身体の観察から立ち上がります。

出典・画像クレジット

近代美術

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